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相続トラブル事例③

③「1つずつ分ければ公平でしょ?」が招いた不動産の大きな不平等

中村家の父・修一さんが亡くなったとき、相続財産は次の2つの不動産だけでした。

  • 古家付き土地A(郊外・築古の一戸建て)
  • 駅近マンションB(駅徒歩5分・人気エリア)

相続人は、長男の亮さんと次男の直樹さんの2人。
「2つあるなら、1つずつ分ければいいよな。」

兄弟仲も良く、その場の雰囲気も和やかだったため、専門家に相談することもなく、そのまま現物分割で決めてしまいました。
兄の亮さんが「駅近マンションB」、弟の直樹さんが「古家付き土地A」をそれぞれ取得することで、あっさり話はまとまります。

ところが、その1年後。
直樹さんがAの古家をリフォームしようと不動産業者に相談に行ったところ、思わぬ事実が判明します。

「この土地、再建築不可ですよ。」

よく見ると、土地は細い路地の突き当たりで、建築基準法上の道路にきちんと接していません。
そのため、古家を取り壊しても、新しい家を建てることはできず、売却もかなり難しい“問題物件”だったのです。

一方で、駅近のマンションBは、すぐにでも賃貸に出せる優良物件でした。
亮さんは入居者を付けて、毎月安定した家賃収入を得ています。

直樹さんの心の中に、こんな思いが募っていきました。

「同じ“1物件ずつ”のはずなのに、実際の価値が全然違う…。
兄貴だけ得をして、自分だけハズレを引かされたんじゃないか?」

不動産業者から概算の価格を聞いてみると、マンションBはAの土地の2倍以上の評価。
しかもAは売却しづらく、固定資産税と古家の維持費だけが負担として重くのしかかります。

「こんなことになるなら、ちゃんと評価してから分けるべきだった。」

そう思っても、分割協議はすでに終わって登記も済んでしまっており、今さら兄に「やっぱり不公平だからやり直してくれ」とは言い出しづらい状況になっていました。
心にしこりを抱えたまま、兄弟の会話は次第に減っていきます。

このケースの問題点

  • 分割前に、不動産の「時価」「再建築可否」「接道」「売却のしやすさ」といった専門的なチェックをせず、「1つずつなら公平だろう」と安易に現物分割したこと。
  • 見かけの面積や「家が建っているかどうか」だけで判断し、不動産特有のリスク(再建築不可・流動性の低さ)を見落としたこと。