2025.11.26
相続トラブル事例②
②「そのうちでいいか…」が招いた、借金と数次相続の泥沼
佐藤家の父・正志さんには、遺言書がありませんでした。
相続人は、長男の浩さんと次男の悟さんの2人。葬儀が終わったあと、2人はこう話します。
「とりあえず今は忙しいし、遺産分けはそのうち落ち着いてからでいいか。」
預金も多くなさそうだし、父は堅実な性格だったので「借金なんてないだろう」と、2人とも楽観視していました。
相続の手続きも、不動産の名義変更も、何もせずにそのまま数カ月が過ぎていきます。
ところが、亡くなって4か月ほど経ったころ、一通の督促状が届きます。
そこには、父名義の多額の借金と、滞納している利息の明細がびっしり…。
「え、こんな借金、聞いてないぞ…。」
慌てて調べてみると、相続が始まってから3か月を過ぎており、相続放棄ができる原則の期限はすでに経過していました。
父の財産を何も手にしていなくても、「何もしないで3か月放置した」というだけで、法律上は借金も含めて“まるごと相続した”ことになってしまっていたのです。
さらに悪いことに、父名義の古い家と土地は1年以上放置され、名義も変えられないまま固定資産税だけが引き落とされ続けました。
その間に、次男の悟さんが病気で急逝し、悟さんの子ども2人が、新たな相続人として登場します。
ここで、一気に話がややこしくなりました。
「父の相続」について、
- 長男・浩さん
- 亡くなった悟さんの子ども2人
合計3人が利害関係者となり、「誰がどれだけ負債と不動産を引き受けるのか」で話し合いが必要になります。
ところが、悟さんの子どもたちは遠方在住で、父の借金も不動産の状況もよく知らず、「そもそも、なんで自分たちが父と祖父の借金の話をしないといけないのか」と強い不信感を抱きます。
相続手続きは完全にストップし、不動産は空き家のまま、更地にも売却にも進めない「負の遺産」と化していきました。
このケースの問題点
- 「借金があるか分からないのに、相続を放置したこと」
- 「3か月ルール(相続放棄・限定承認の期限)」を知らずに、気づいたときには手遅れになっていたこと
- 不動産を1年以上放置した間に数次相続が発生し、相続人が増えて話し合いがほぼ不可能になったこと。


